Areas of expertise

■ 研究の社会的意義

科学技術の急速な発展は、どのように社会、政治、経済、法、文化などを変えているのでしょうか? また、社会や文化の変容は、科学技術のあり方にどのような影響を及ぼすのでしょうか?

科学技術の過去・現在、そしてこれからについて、またそれに伴う社会や文化の変容を考えるには、実際に実験や技術開発を行う科学者・技術者だけではなく、社会、文化、歴史など多様な要素を多角的に分析する人文・社会科学者の力が非常に重要です。

人文社会科学者を基盤とした戦略コンサルティング会社を立ち上げたクリスチャン・マスビアウ(Christian Madsbjerg)は、ビッグデータの時代には、そのデータがどのような意味を持つのかを理解する洞察力「センスメイキング」が必要だと述べています。つまり、データだけが大量に蓄積したとしても、そこに文化、精神、歴史、人間の経験などに根ざした視点がなければ、データから「一体、何が、誰にとって、どのように重要なのか」を抽出することができないのです。

「文化人類学」という研究分野は、エスノグラフィー(人々の社会生活における観察やインタビューに基づいた質的研究)という手法を用いて、人間の生活様式や文化を理解する分野として発展してきました。「文化人類学者」と聞くと未開の地(アフリカやアマゾンなどの奥地)で人々の奇妙な生活様式や儀式を観察する研究者と思われるかもしれません。「科学技術の人類学」では、現代社会を特徴付ける先端科学技術が生み出される場(実験室やベンチャー企業など)やその科学技術が影響を及ぼしている現象を分析します。

科学技術の人類学は、Science and Technology Studies(科学技術社会論)、哲学、社会学、人類学、メディア論、フェミニズム論、歴史学など多様な境界領域を含みます。これらの理論や概念に基づいて、自分の見ている現象について、大量のデータ(文書データ、インタビューデータ、デジタルデータなど)を読み込み、インタビューや観察を行うことで、社会の変化を理解するための新しい概念や理論を生み出します。調査では、科学者が用いる実験モデル、シュミレーション、実験器具、生き物(細胞、実験動物、タンパク質など)の特殊性などを理解するとともに科学者の置かれている文脈、科学者コミュニティのあり方、キャリア制度、その分野を取り巻く政策やファンディングを理解しようとします。総合的なデータ収集と問いを深めるプロセスを重ねることで、当事者である科学者でも気づかない物事の結びつきを見出すことができるのです。

■ 専門スキル

  • エスノグラフィーや人類学についての講義
  • エスノグラフィーや人類学を用いた新しい見方や実践の提案
  • エスノグラフィーの実践(調査方法、データ分析、まとめ方など)についての講義や助言
  • 参与観察、インタビュー、文書データの分析の調査やそれに基づいた提言
  • 知識・技術を含む社会や組織についての研究動向などの調査やまとめ
  • 海外の動向の調査やまとめ